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一時間後、配達の仕事を終えた女性を診るため、ぼくはお店の入口に治療中の札を出した。
今日もあまりお客さんは来ないだろうけど、お店を閉めているワケではないと知ってもらえるよう念のためだ。
お店の奥を案内して、椅子に座ってもらう。あらためて明るい場所で見ると、ヤケドのあとは左の耳の下から首筋まで広がっていて、とても痛々しかった。
「ぼくは東の村から来た丹々と言います。あなたのお名前を聞いてもいいですか?」
「私は寧々。父さんが経営している牧場で働いているの」
「寧々さん。少しだけ、触らせてくださいね」
そう言って傷あとに触れると、寧々さんは大粒の涙をこぼした。
「ごめんなさい! 嫌でしたか」
「ううん。この気持ち悪い傷あとを、間近で見て、触ってくれる人がいることに驚いたの。あなたは私を気味悪がらないのね」
「気味悪くなんてないですよ。しばらく薬を飲み続けてくれれば、きっと良くなります」
「さっきも言っていたけど、お薬を塗るんじゃなくて飲むの?」
寧々さんは不思議そうに首を傾げた。
「そうです。薬で肌の再生能力を高めます。すると、肌が生まれ変わる周期を早くなるんです。だから、薬を飲んだからってすぐに効果はでませんが、少しずつ薄くなっていきます」
「そんなことができるの?」
「できます。ぼくを信じてください。あと、そうですね。睡眠が足りていないようなので、なるべく早く寝るようにしてください」
「……わかった」
真っ直ぐ目を見て話すと、寧々さんは恥ずかしそうに俯いた。
「大丈夫ですよ。寧々さんはとてもきれいな顔立ちをされています。傷あとが薄くなったら、自信を持って相手を見つめることができるようになります」
「うん……、恥ずかしいのはそれだけじゃないんだけどね」
「え?」
「なんでもない。じゃあ、お薬をお願いできる」
「もちろん! 寧々さんの症状に合ったお薬を調合します!」
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