奇跡のおくすり

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 それから、ぼくは色々な人に出会った。  ケガをして動けなくなった旅人、声が出なくなってしまった歌姫、体中にぶつぶつが出てしまったおばあちゃん。さまざまな人を治しながら、ぼくは旅を続けた。  時には薬草が足りなくなることもあった。奇跡のおくすりの材料で間に合わせに調合した薬を飲んで元気になった人もいれば、中々合う薬が見つけられない人もいた。  ある時立ち寄った村には、はじめの村と同じように薬師がいなかった。  だからぼくは薬を調合するぼくに興味を示し、自分も薬師になりたいと話してくれた少年に薬の作り方を教えることにした。  少年は、猟師という常に危険と隣り合わせの仕事をしているお父さんの役に立ちたいと、懸命に僕から学び経験を積んでいった。やがて、その人に合った薬の調合までとはいかないが、傷薬や痛み止めなど複雑でない薬なら一人でも作れるようになった。 「あの子もよくやってくれているのよ。あなたが薬の作り方を教えてくれたから、この村でけがや病気で亡くなる人は格段に減ったの。  ああ、だけどやっぱり、あなたが作ってくれた薬の方が効く気がするわ。じんわりとね、私の体を癒してくれるのよ」  村で一番長生きのおばあちゃんは、そんなことを言ってぼくの頭を撫でてくれた。ばあちゃんのことを思い出して、その夜ぼくはひそかに泣いた。
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