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そうして、二年がたった。
首都でも薬屋としてたくさんの人々に薬を処方し、時には流行り病とも闘った。それをきっかけにぼくが作った薬は国中で話題になり、ぼくの名前を知らない人はいなくなった。
だけど、ぼくはまだ奇跡のおくすりの調合方法を見つけられなかった。
材料はどこにでも自生しているありふれた薬草だ。
今までたくさんの薬を作ってきたけれど、その薬草に特別な効果はない。わずかな抗菌作用と抗炎症作用、安眠作用が認められる程度だった。
最西端の町に到達したぼくは、そこから折り返して東の村へ帰ることにした。
ひたすらに経験だけを積んだ。それ自体は誇れることだ。
だけど、ぼくは世界で一番になれても、母さんのような薬師にはなれないのだろうか。
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