Episode3 枯れ葉はもう緑にならない

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Episode3 枯れ葉はもう緑にならない

大統領の演説はしばらく続いた。 観衆は静寂を依然として保ち、それはもちろん僕とマルクスもそれに従っていた。 しかし今まで大統領の声しか聞こえなかった会場に雑音が混じった。 体に振動が伝わるほどの低音。 爆撃音だった。 「我が軍の勝利の音だ」 大統領もその音に気づき、焼けた空を背景に、また高々と叫んだ。 「え、」 ペルーは静寂の中、思わず声を漏らしてしまった。 飛行機が異常に近くに見えたからだ。 一瞬だった。 本当に一瞬だった。 目の前が白く光ったと思った瞬間には意識を失っていた。 熱い。熱い。 目をゆっくりと開けると、人を原料に火が燃えていた。 静寂だったはずの人々から叫び声も聞こえた。 「熱い」や「痛い」ならもう雑音だった。 「大統領をぶち殺せ」や「子供を返せ」の声がペルーの耳に痛いほど入ってきた。 パニックにならないように、ゆっくりと体を動かすと、自分の足が真っ赤になっていることに気がついた。 少し呼吸を乱すが、ゆっくと自分の足で立ってみると、呼吸は通常通りに戻ってきた。 大統領が立っていた演説台も全焼しており、ドクターヘリと書かれたヘリコプターが見えた。 「マルクス?」 衝撃のあまり親友と演説に来ていたことを忘れていた。 しかし周りを見渡しても、マルクスらしき姿はなかった。 先に家へ帰った。 無責任だな。と軽く思ったが、マルクスが立っていた位置に目を戻すと、マルクスの服があった。 服は何かに覆いかぶさっていた、 服をめくってみるため、地面に膝をついた。 鼓動が乱れてきた。 何か恐ろしい予感がした。 服をめっくてみると、そこにはマルクスの体があった。 もうマルクスではない。 漂った匂いを噛みしめながら、家へと走った。
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