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「すみません、厚生年金会館前という所まで行きたいのですがご存知でしょうか?」
見た感じは30代、スーツを着たいかにも真面目そうなサラリーマンの男性が困った顔をしてたずねてきた。
ハリネズミはよっこらしょと男のほうに向きなおった。
「こうせいねんきん・・・ん~。」
「おばちゃ~ん、どうしたの~?」
道の向こうからリスの子供たちがかけてきた。
「こうせいねんきんなんとかってのを知ってるかい?」
りすは手にしたクルミをコリっとすり合わせて器用に殻を割った。
「きつねのねえさんとかどう?前に旅行に来た人の案内とかやってた。」
きつねは野菜屋の店先できのこを片手に、首をかしげた。
「神社とかお店ならわかるんだけど~。」
「ブナシメジ、はいってる~?」
「あら、いたちの奥さん。いらっしゃい~。」
たちまちこりすが群がった。
「あ~、聞いたことはあるんだけどー。こだぬきさんとか知らないかな。」
かくしてこりす軍団につれられてこだぬきの店へ。
こだぬきは売り物の地図を見てくれたが、書かれていなかった。
「わたくしたちにはあまり馴染みのない場所なのでしょうねえ。」
たしかにそのようだ。
「うさぎさんやおばあさんにお尋ねしてみては。」
こりすに手をひかれるようにして、うさぎ&おばあさんを尋ねる。
うさぎは赤い目をくるりとさせた。
「おばあさん、知ってます?」
「わたしはあまり外出しないので。おじいさんはどう?」
「レンガ色の建物だったんだが・・・。」
おじいさんが首をひねっているところに元気な声がした。
「ぼく、わかります!」
「あら、太郎は知ってるの。」
「うん、ぼくもそこへいくご用があるからいっしょにいきましょう。」
うれしそうなうさぎたちに礼を言って、元来た道をたどり、みんなの安堵に送られて目的地へ。
「あなたはどんなご用ですか?」
「おばあさんに元気になってほしくて、体によい食べ物の話を聞いてくるんです。」
やがて目的地へついた。
「では失礼します。」
ほどなくして待ち合わせの相手がやってきた。
「迷いませんでしたか?」
「いえ、とてもよい案内人の方がいましたので。」
回り道も無駄なことばかりではない、と男は笑みをうかべた。
第203回妄想コンテスト「うさぎさんと桃のおくすり」のキャラクターたち。待ち合わせ相手は神様です。
本編のみんなの様子もご覧ください。
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