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 メイクを落とすのに少々時間がかかったのか、青年は20分ほどで浴室から出てきた。  ベッドに腰掛けている安藤の姿を見て、にこりと微笑みかける。  同じバスローブを着ており、先程までピッチリと後ろに撫で付けてあった黒髪が額に掛かり、実年齢よりも幼く見える。  仮装を解いた青年はアスリートのように締まった体躯をしており、矢張り端正な顔立ちだった。  余計なお世話だが、ゲイであるのが少し勿体ないような―― 「帰らなかったんだね」 「……………」 「そんなに俺に悪戯してほしかったの?」  からかうような物言いに、カッと顔が熱くなる。  何か言い返そうと思ったが、次の瞬間安藤はベッドに押し倒され、言おうとしていた言葉を失った。 「意地悪なこと言ってごめんね。優介さんみたいな人って……あ、ノンケの人ね。時々二丁目に来るからさ、何を求めてるのかってのは何となく分かるんだよね、俺」 「え……」 「自暴自棄(ヤケ)になって自分を虐めたいとかじゃなくて……癒されたいんだよね?」  安藤は、思わず目を見開いて青年を見つめた。  青年は安藤を見透かすような目で見つめ返し、続ける。 「普段自分が女の子にしているように、お姫様扱いされたいんでしょう?」 「……っ」  その通りだった。  安藤はそこまで明確に思っていたわけではないが、青年の言葉でむしろ自分がどうして貰いたかったのか、いまハッキリと分かった。 「……そうだ、そうなんだ、俺は……!ダメ、かな。男なのにそんなの、気持ち悪いかな」 「ダメなわけない、男だってそうされたい時もあるよ、みんな言わないだけでさ。それに気持ち悪いなんて思うわけないでしょ?優介さんはとってもかわいい人だよ」 「俺が可愛い?」  幼い頃ならいざ知らず、可愛いなんて誰かに言われたのは初めてだ。  なんとなくその言葉の響きが擽ったくて、安藤は思わず笑ってしまった。  女でも子どもでもないのに、ありのままの自分を可愛いと言ってもらえるなんて。  ――しかも、自分より6つも年下の男に。 「何も怖くないから安心して俺にカラダを任せて?優介さんが気持ちいいことしかしないし、とっても優しくしてあげる」 「でも、ジャック……」 「優介さんは何もしなくていいんだよ。ただ、俺の愛撫に感じていて。気持ち良かったら素直に声を出して、縋りついて。――ぜんぶ、受け止めてあげるから」 「………っ」  安藤は青年のその言葉だけで、もう既に心が満たされ、癒されていた。 けれど青年はその言葉通り、優しく丁寧に、でも時々激しく、安藤をどこにも逃げ場のない快楽の渦の中にあっという間に叩き込んだ。 ★ 「あ、あ!ジャック、ジャック……!ひぅっ!んぁ、あ、あん、いい、あ、あーっ!」 「優介さん、気持ちいい……?」 「いい、きもちい!もっと、あ、もっと欲しっ……んうぅっ……!」  激しい抽出をされるたび、安藤は青年の仮の名を何度も叫び、必死でしがみついた。  挿入するまでは不安だったが、青年の砲身がスムーズに入るまで指で優しく蕾を解され、挿入時は痛みも無く、もはや快楽だけが安藤の身体を支配している。 「あ、ああ!そこ、そこいいっ!もっと突いて、ジャックの硬くておっきいチンポでゴリゴリって!おれのケツマン、奥まで犯してぇ!」 「ハハッ、えっろ……!優介さん、サイコーだね。いいよ、もう元に戻れなくなるくらい激しく犯してあげる」 「あっ、嬉し……!んあ、あひっ、ひああ――!」  信じられない場所に、自分と同じ男の象徴を奥までギチギチに埋め込まれている。  気持ちよくて、でももっと欲しくて、思わず卑猥な言葉を撒き散らした。  普段はすました顔で社会生活を送ってる自分からは、到底考えられないくらい下品だ。  男同士のセックスがこんなにも倒錯的なうえ、脳髄が痺れるくらい気持ちがいいなんて知らなかった。  知らないままでいたほうが良かったかもしれない、と後悔を覚えるほどに。
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