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4F プレステージブティックフロア
キョロキョロと落ち着かない様子で、店内を見ている女性がいます。
年の頃は二十代前半。
プラダ、グッチ、エルメスにシャネル。ミュウミュウに、ボッテガ・ヴェネタ。
名だたるブランド店に慣れていないようなその女性は、バーバリーロンドンに入って行きました。
ショーケースのお財布をじっと眺めます。
「そちらは今年の新作なんですよ。とても人気があります」
店員さんが女性にそっと声をかけました。
振り向いた女性は、店員さんに話しかけられてホっとしたように話し始めます。
「私、今までブランド物を持った事がなくて。でも、周りの友達とかブランドの財布とか使ってるのを見て、いいなと思ったんです」
「お気に入りの財布を大事に使うというのも良いものですよね。私も、就職した時にお気に入りの長財布を買いましたよ。内緒の話し、そんなにお金なかったんで、ここではないですけど」
店員さんの気軽な話し方に、女性嬉しそうに話します。
「そうですよね。気に入った良いものを長く使いたくて、私。ここのチェックは以前から、好きだったので」
「ありがとうございます。お財布の形は色々ありますので、ごゆっくり、気にいる物を選んでくださいね。ちなみに長財布と、二つ折りとどちらをお探しですか?」
「長財布で新作じゃなくて、定番のチェック柄がいいです」
「じゃあ、こちらはいかがですか?チェック&レザーのコンチネンタルウォレットと言う商品です。チェーンストラップ付きもございますが……」
「ストラップは要らないです。あの……、手に取ってもいいですか?」
「勿論です、どうぞ」
恐る恐る、といったように女性が財布を手にしました。中をそっと開いてみます。
「カード入れるとこ、もうちょっとあったらいいかなあ」
「申し訳ございません。今のデザインですと、大体六枚くらいの収納です。余りたくさんの物を入れると財布自体が傷みやすいので、カードは別のカード入れに入れて保管する、と言う方も多くいらっしゃいますよ」
店員さんの説明に、女性は感心しています。
「なるほど!!! お財布の傷みか。確かに小銭入れ、別持ちの人いますね」
女性の恋人が、そのタイプの人なのだと店員さんに話しています。
店員さんは黙って、女性が選ぶのを待っていました。
「長い時間かかって、すみません。最初に勧めて頂いた、このお財布にします」
女性は店員さんに一つの財布を、指差しました。
「ありがとうございます。では、お包みいたしますね。その前に傷などがないか、ご一緒に確認をお願いします」
店員さんは丁寧に傷などのチェックをし、財布を布で磨いています。
女性はそんな店員さんに、嬉しそうに言いました。
「ブランドにこだわるのは恥ずかしい、って思っていたのですが、良いものですね。身が引き締まる想いがします」
「そう言って頂けると、私共も励みになって、とても嬉しいです」
笑顔の店員さんから、財布が入ったバーバリーの手提げ袋を受け取ると、女性は嬉しそうに誇らしげに帰って行きました。
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