蝉鳴く頃に君想う

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 僕がバイトを始めひと月が経とうとしていた。季節は移り変わり蝉が鳴き夏の終わりを告げていた。そして、僕の青春の終わりも……。  バイトもいよいよ明日が最後となり僕は美玖に告白をする決意をしていた。というのも、あれからほぼ毎日バイト終わりに美玖と逢っており、健斗が言うにはかなり脈があるって言われた事もあり一世一代の決心をしたのだ。僕はその決意を胸に何時もの様にバイト終わりにコンビニに向かった。コンビニには美玖の姿があり僕は意を決して言葉を掛ける。 「美玖に大事な話があるんだけどちょっと外出て貰える」 「あれっ、初めて呼び捨てしてくれたね。いいけど何」 そう言う美玖の手を握り僕は美玖を外に連れ出すと告げる。 「僕は美玖が大好きです。だから、付き合ってください」 僕の言葉に美玖は驚いた様子で暫し考え込んだ後ゆっくりとそして優しく答えた。 「ごめんね。私も達也が好きだよ。――だけどもう私には残された時間が少ないの。ガンで来年の今頃はきっと……」そこまで言うと美玖は言葉を詰まらせ声を殺して泣き始めた。今なら抱きしめたり出来ただろうが、その時の子供な僕は泣き止むまで見守る事しか出来ずにいた。暫く見守っていると、美玖は泣き止み言葉を続ける。 「気持ちは嬉しいけどごめんね。付き合うことは出来ない。その代わり」そこまで言うと美玖は僕にキスして更に言葉を続けた。 「今までありがとう。本当に楽しかったよ。さよなら」そう言い残して僕の下から去って行ってしまった。僕は見送るしか出来ずにいたため、明日、もう一度話そう。そう思いこの日はコンビニを後にしていた。  翌日バイトに行くもそこに麗奈の姿は無く当然の如くコンビニにも美玖の姿は無かった。間抜けな僕をあざ笑うかの様に蝉がせわしなく鳴いていて、僕はその中で人目を憚らず泣きじゃくっていた。  蝉が鳴く季節になればいつも美玖を想う。蝉の様に命を燃やし美しく生きていた君を……。
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