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玉座の間にて
「勇者ベルガよ。魔王の封印が解けたことは知ってるな?」
ここは王宮。玉座の間。
この国の若き王サザールの前に跪く青い髪の青年は、緊張した面持ちで答える。
「存じております」
「……500年前、青髪の勇者が激闘の末、魔王を封印したのは有名な話であり、青髪は勇者の証。ベルガ、お主は生まれながらの勇者。封印が解けてしまった今、人類はお主に頼るしかない。勇者ベルガよ、魔王の事は任せた」
今、ここにいる者はベルガと王と数名の王の側近のみ。
無音がこの場を支配した。
……
……
……
……
「…………はっ?」
長い沈黙を破り、青髪の勇者と呼ばれた青年は素っ頓狂な声を出し、顔を上げる。
「……ええっと……なんて言いました?」
「魔王は任せた。と」
「嫌です」
即答する勇者ベルガにサザール王は首を横に振った。
「いやいやいや、お主に断る権利はない。勇者だからな!」
「いやいやいや、無理ですってば。俺は名だけの勇者ですよ?」
「いやいやいや、それ、自分で言っちゃうぅぅ?」
砕けた口調になってきたサザール王に、ベルガはおいおいっと文句をつける。
「王……いや、サザール。幼馴染だから、この際言わせてもらう…………俺は弱い。はっきり言って弱い。めちゃくちゃ弱い!」
「仮にも勇者だろ?」
呆れ顔のサザール王をよそに、ベルガは両手を腰に当て、胸を張った。
「仮のなっ!」
「……偉そうに言うな。とにかくだ。青い髪色で生まれてきた以上、お前は勇者の称号を得ているわけだから、魔王は任せた。煮るなり焼くなり好きにしろ。その為の勇者だろ」
「魔王だぞ? 魔の王だぞ? 俺が煮るなり焼くなりされるだろっ!! 500年前の青髪の勇者だって、たまたま髪が青かっただけじゃないか。もし、勇者が緑目だったら、俺は関係ないぞ!?」
ベルガは青い目を思いっきり開き、声を大にして異論を唱えた。
勘弁してくれよ……俺、魔王と戦ったら瞬殺される自信だけはあるぜ。
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