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サザールの思惑 ~サザール視点~
「国王、よろしかったのですか? 勇者ベルガに魔王の事を任せて」
側近の問いに俺は手に持った深紅のワインをクイッと飲んで、にんまりした。
「大丈夫だ。あいつは腕っぷしはからきしだが」
「大丈夫でしょうか?」
「トランプはめっぽう強い」
「左様ですか」
「そして、コミュ力は抜群だ。しばらく魔王の遊び相手をしてくれるだろう」
ベルガとシンの顔を思い浮かべて、ふふっと笑いを漏らす。
あの2人は面白いからな。魔王も気に入るはずだ。
「魔王の事は王家に伝わる秘匿といえど、勇者なのですから、教えて差し上げればよろしかったのに。魔王の本性を知っていたら、彼もあんなに怯える事もなかったでしょう」
「ベルガをからかうと面白いから」
クスクス笑いながら答えると、側近は呆れたように肩をすくめる。
「左様ですか」
たぶん何日もかけ、楽しく遊ぶだろうから、差入れでもしてやるか。
俺は時計をチラリと見て、ワインを一気に飲み干した。
「魔王は暇だと暴れだすからな。酒に酔って気分良く寝てくれたら、500年の平和が約束される。あいつらには遊び相手として、存分に魔王を楽しませてやって欲しいもんだな。さて、我々は会議を開くか」
「御意」
側近は頭を下げ、俺は立ち上がる。身を翻し、会議室に向かいながら、小さく溜息をついた。
ああ、俺も幼馴染達と一緒に遊びたかったよ。
《fin》
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