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サザール王は肩をすくめ、あさっての方向を見る。
「知らんよ。歴史書には青髪しか特徴書いてねーもん」
「歴史書の著者めぇ。他の特徴も書いとけ! チクショー、誰だよ……青い髪は勇者の証、なんて決めたのは……」
不服そうにじとりと睨みつけるベルガに、サザール王は他人事のようにつぶやいた。
「さぁ……歴史書を読んだご先祖様じゃね?」
「ご先祖様じゃね? …………じゃ、ねぇよ! なんで俺の代で魔王の封印解けるんだよぉ」
「まぁ、泣くなよ。それも運命。魔王をなんとかしてくれたらさ、子供の時に王宮のメイドのスカートめくりをしていた事は黙っといてやるから」
「言うなぁぁぁぁ!!!!」
突然の暴露話に顔を真っ赤にしたベルガは、慌てて制止の声を上げたが、周りに控えていたサザール王の側近達は笑いをこらえるのに必死な様子だった。
「……っ。そんな……ガキの頃の話…………」
「そうそう、ガキの頃の話。だから、まぁ今更女性達に知れ渡っても」
「王、魔王はお任せください」
サザール王の言葉を速攻遮るベルガ。頼もしい言葉と共に口からキラリと白い歯をこぼし、張っていた胸をトンと叩いた。サザール王は満足そうに頷く。
「それでこそ勇者。あ、旅の資金は支給するから、予算書出して」
「予算書って……細けーよ!」
「後はよろしく!」
「丸投げかよ!!」
ベルガの叫びも虚しく、じゃあとサザール王は席を立って、忙しそうに玉座の間をあとにした。
こうして勇者ベルガは不本意……本当に不本意ながら、魔王をなんとかすることになってしまったわけである。
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