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ベルガの閃き ~ベルガ視点~
やだよぉ。やだよぉぉ。やだよぉぉぉ。
なんで俺が? ただ髪が青いっていうだけなのに。
王宮から帰ってきた俺は頭を抱えた。
サザールめ。ガキの頃の話をちらつかせるなんてずるいぞ……
忌々しく思いながも、勢いで受けてしてしまった以上、何とかしなくてはならない。
スカートめくりのせいで、俺の人生終わったな……
絶望的な気分で俺はテーブルに突っ伏した。
子供の頃の俺に言いたい。そのスカートめくりは身を滅ぼす。と。
ところで魔王って何したんだっけ?
ふと疑問に感じ、歴史の授業を一生懸命思い出す。
――青髪の勇者が激闘の末、魔王を封印――
歴史書にはその文言しか載ってなかったような気が……今だって魔王の封印が解けたにもかかわらず、平和だし。そもそも魔王って悪い奴なの? いや、でも魔の王だしな。
思考を巡らせながら、頬杖をつく。
魔王をなんとかねぇ。なんとかって言われても……なんとか……か……倒せとは言われてないよな……そう言えば。
うーん……別に魔王を倒す必要はないわけか……
俺はピンと閃いた。
「そうだ! 魔王城へ行こう!!」
「おい……なに物騒な事言ってるんだよ?」
名案が浮かび、テーブルをドンと叩きながら立ち上がる。同タイミングで我が家の扉が開き、銀髪の青年が無遠慮にズカズカと家に入ってきた。もう一人の幼馴染シンである。
「お前、勝手に家に入ってくるなよな。女の子とイチャイチャしてたらどうするんだよ」
「生まれてこの方、お前のそんな状況見たことねーよ」
ご自慢の髪をかきあげ、くくっと笑う銀髪のモテ男。
ぐっ……自分で話を振っといてなんだが、恋人いない歴=年齢なのは認めざるを得ない。
「で? なんでそんな事になってんの?」
シンは勝手に我が家のコップを手に取り、水を汲むとゴクゴク飲んだ。
シンの辞書には遠慮の二文字はないのか?
「今日さ、サザールに呼ばれたじゃん?」
「おう」
「封印が解けた魔王を何とかしろって言われたんだよ」
俺が不満全開でブスッと答えると、シンはスイッチが入ったようにギャハハハと笑い始めた。
「お前に? お前に? お前にぃ? 無理だっつーの。幼馴染三人の中でも最弱なのに?」
絶賛大笑い中のシンを横目で見ながら、少しムッとする。
自覚はしてても、人に言われると腹立つぞ。
「確かにお前は伝説の青髪の勇者かもしれないけどさぁ。お前が殺られるのは火を見るより明らかだろ? なんでそんな事、引き受けてきちゃったわけ?」
俺はシンの質問に言葉を詰まらせた。
言えねぇ…………
子供の頃のスカートめくりを暴露されそうになったから。
なんて。
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