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「ゆ、勇者だからな……」
「お前、弱み握られてんじゃねーの?」
「ち、ち、ち、違うぞ!! 断じて、スカートめくりを暴露されそうになったからじゃないぞ!!」
我が幼馴染はニヤリとスカートめくりねぇとつぶやいた。
…………俺のバカ。
「で、魔王を倒しに魔王城に行くと……自殺行為じゃん」
腹を抱えてケタケタ笑うシンに、薄っすら殺意が芽生えそうになる。
幼馴染の命が危ないのに笑いやがって。この笑い上戸め! 人の事何だと思ってるんだよ。
「お前も行くんだからな」
「……はっ?」
シンは一瞬で真顔になり、俺をまじまじと見た。
「え? 良く聞こえなかった。も、一回、言って?」
「お・ま・え・も・い・く・の!!」
「嫌です」
「決定です」
「なんでっっ!!」
理不尽に命令を受けた数時間前の自分を見ているようで、俺はほくそ笑んだ。
「国王命令だから」
「サザールめっ」
「俺、一人じゃ死にます。って文句を言ったら、シンも連れてけ。だってさ。魔法戦士だから、あいつは便利だろ? だってー」
俺がニヤニヤしていると、シンは恨めしそうに俺を凝視する。
「俺を便利扱いするな……」
「というわけで、君もお仲間なわけだ」
「サザール、幼馴染の俺達の扱い雑じゃね?」
さっきまで笑い転げていたとは思えないほど、ムスッと不服そうな顔で恨み言を吐き出すシンに、俺は鼻でふっと笑った。
「幼馴染だから気が置けないんだろ……」
「気が置けないから魔王倒せ、は納得いかねー」
「そこなんだよ! 俺さ、魔王を何とかしろとは言われたけど、倒せとは言われてないんだわ」
「でも、お前、魔王城行くんだろ?」
お前もな! と言いたいところだが、拒否られ話が元に戻りそうなので、ここは黙って話を進める。
「ああ、魔王が行動を起こす前に俺から向かうって訳だ」
「…………最弱勇者のわりに豪胆だな。先手必勝ってやつか?」
「最弱は余計だろ! 戦いは挑まねーよ」
俺の台詞に首を傾げるシン。
「じゃあ、何しに行くんだよ?」
さっき思いついた名案を俺は自信満々に披露する。
「ご機嫌伺いだ!」
……
……
……
「…………はい?」
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