8人が本棚に入れています
本棚に追加
シンの気苦労 ~シン視点~
「全部経費で落とせるからな! 魔王の好物はわからないし、ジャンジャン買おうぜ。ジャンジャン。あ、領収証もらってこいよ」
ホクホク顔のベルガは、あちこちの菓子屋でプリンとゼリーとチョコとケーキとクッキーとシュークリームと団子と饅頭を買い込んだ。
なぜ甘いものだらけなんだ? これ、お前が食べたいやつじゃね? 魔王の好物が人間だったらどうするんだよ!
恐ろしい考えとベルガのニヤリと笑う姿が脳裏をよぎる。
お前も手土産のひとつだよ?
言いそう。こいつは言いそう。いざとなったら俺を犠牲にして逃げるだろうな。逃げ足だけは早いんだよ。こいつはっ!
「シン、ちゃんと道案内しろよ!!」
ベルガは俺に地図を渡すと、魔王城に向かって意気揚々と歩き出した。
「やっぱり、シンを連れてきてよかった。荷物も持ってもらえるし、地図も読めるし、手土産も用意できたし、な!」
楽しそうなベルガの台詞に俺はブルリと体を震わせる。
手土産…………って、俺じゃないよな?
願わくば、魔王へのご機嫌伺いが穏便にすみますように……って、このご機嫌伺いって作戦、本当に上手くいくのか?
………………不安だ。
最初のコメントを投稿しよう!