シンの気苦労 ~シン視点~

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「ここか…………」 「ここだな…………」  俺はゴクリと唾を飲んだ。  城を見上げ…………城を……これは、城……なのか?  城とは到底思えなくらいボロボロの木造建築。建築というのもおこがましい。強いて言うならば、小屋。そう、小屋を見上げた。 「ここ……なのか?」  ベルガはポカンと口を半開きにし、再度俺に確認する。 「サザールから渡された地図によると、ここなんだけどな」 「その地図は、信頼できると思うけど……」 「……正直に言おう。俺は渡された瞬間から怪しいと思った」  ずっと心に溜めていた不信感を一気に吐き出す。 「『精霊の(ほこら)を東に500m、道具屋があるからトランプ購入。そこから南に800mの酒屋で酒を購入。この際、酒は何でも良い。そして、そこから更に南に700mの呪いの洞窟を東に400m。その建物が魔王城デス!』…………絶対ふざけてるだろ、これ。おつかいか? おつかいさせられてるのか!?」 「いやぁ、それしか手がかりないんだわ」  ベルガはヘラヘラと笑った。  なんで、こいつはこんなに呑気なんだよ!?  俺は地図をグシャリと握り潰す。 「しかもだ…………聞いて驚け。王都を出てから、1時間も経っていない」 「という事は?」 「魔王城はご近所さんだ」 「じゃあ、ご近所づきあいの為にも手土産もってきて正解だな!」  グッドじゃん!と満足げに親指を立てるアホな幼馴染に俺は叫んだ。 「そういう問題じゃねぇぇぇ!」  魔王とご近所づきあいとか…………頭が痛い。 「地図を渡したサザールだって場所は把握してたんだぜ? 王都と近所なのは国は知ってただろ」 「たしかに……」  2人であれこれ言い合いをしていると、小屋から迫力ある声が響いた。 「人の家の前でさっきからうるさいぞ!」
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