8人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
ベルガと魔王 ~ベルガ視点~
ほったて…………いや、魔王城に入るとテーブルと椅子とベッドと小さい棚が置いてあるだけの質素な部屋に案内された……というか、この部屋が全てだった。
…………魔王……城?
「そこに座れや」
顎でクイッと椅子を指し、俺とシンに促す。自称魔王は棚に向かったが、すぐに振り返り、申し訳なさそうな顔をした。
「すまん。茶……500年前のだわ」
「いりません」
俺達は声を揃えて断る。
さすがに500年前の茶は腹壊す……
「で、お前らは何しに来たんだ?」
「ご挨拶に…………」
「お、嬉しいね。なにこれ? うぉぉ、旨そう!!」
俺が持ってきた手土産を次々開けては、パクリパクリと食べ、酒をグイグイ飲み始める魔王。
おおっ、食いつきいいじゃん! 甘いの持ってきて、正解! シンは呆れ顔してたけどさ。
ほらほらほらとシンにドヤ顔をすると、シンは目を丸くし「魔王は甘党なのか……!?」とブツブツとつぶやいていた。
……にしてもよく食うな……俺の分も残しといてくれないかなぁ。
魔王が大口開けて食べているのが旨そうで、よだれが出てきた俺をシンが肘でツンツンとつつく。
「今、機嫌が良さそうだから話せよ」
俺にしか聞こえないくらいの小声でボソボソ言い、俺は本来の目的を思い出した。
「お願いがあるんだけど…………」
夢中でクッキーを口に入れ、頬を膨らませた魔王が、ん?と顔を上げる。
リスかっ!
「聞いてやらんこともない」
クッキーをゴックンと飲み込み、偉そうに言うが、すでに威厳はゼロである。
「できるだけ、大人しくしてて欲しいんだけど」
「いーよー」
交渉は成立した…………はやっ。
最初のコメントを投稿しよう!