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「あの……500年前封印された事、怒ってないんですか?」
トントン拍子に進んだこの交渉に裏があると不審に思ったのか、シンが口を挟んできた。俺達は魔王にギロリと睨まれる。
シンのバカー! 余計な事、言うなよー。
「封印? 余は寝てただけだ」
魔王の台詞に俺とシンは顔を見合わせた。
「寝てただけ?」
「余は酒を飲むと眠くなる。一度寝ると500年くらい寝てしまう快眠体質だ」
500年睡眠……快眠の定義っていったい……?
「じゃあ、青髪の勇者と激闘の末って言うのは……」
「おう、戦ったぜ!」
俺とシンを纏う空気に緊張が走った。
やっぱり話し合いじゃ解決しないのか……戦いになったら、どうしよう……勝てる気がしねぇ。シンを置いて逃げるか……
絶望に叩き落された気分でいると、魔王の自慢げな声が聞こえた。
「トランプで」
予想の斜め上を行く単語に、俺は思考停止してしまう。
「…………トランプ?」
「そっ。で、お前らもせっかく来たんだ。俺と戦っていくだろ?」
「トランプで?」
「そっ」
魔王は嬉しそうに、にぃぃぃと笑い、俺らが持ってきたトランプを切り始めた。
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