夏が終わっちゃう

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 いつか浴衣を着て彼氏と花火を見に行く。  これは私が高校生の頃から憧れていた夏の最高のデートコース。 っていうか、いつからかクリアしなきゃいけない必須のミッションになっていた。  そして、いまだにミッションインポッシブル。なんで?  実現できずに、気づけば、早、アラサー。こんなはずじゃなかったと夏が来る度に思うことこ、幾霜月。  言い訳じゃないけど、私にだって彼氏がいた時期くらいある。でもここで肝心なのは、その夏の大イベントの直前に、必ずと言っていいくらいお別れを告げられ、そのイベントが始まる頃にはいつも一人だという厳しめの現実。彼氏いない夏歴を今年も更新予定。なんでこうなる?  今年こそは浴衣を着て花火に行けるんじゃないかと思って、実は新調していたんです。それがつい1週間前。それがたった今、ご破算になってしまったのだ。私がちょっとだけ結婚をにおわせたから?だって、こちとら、もうじき29歳、どうしたところで意識するでしょうが。  それから一人暮らしに随分と慣れてきた自分の部屋に寂しく戻り、意識が飛ぶまで飲みまくったせいで、床にまで散らばるアルコールの空き缶はボーリングのピンみたいに転がっている。  実家に友達からの結婚報告のハガキが届いちゃうたびに、かかってくる母からの電話。それが折も折、別れを告げられてしまったその日だったりする、このタイミングの悪さ。 「付き合っている人とはどうなの?」 「まぁボチボチ」 「紹介してくれるはずじゃなかったの?」 「ちょっと彼忙しくて」  またアルコールの缶を一つ握りつぶす。ここで別れたなんて報告しようものなら、どんなお説教が待ってるか・・・結局、怖くて言えなかった。はい、私、意味の無い嘘をつきました。  ハンガーにかかって部屋のインテリアの一部となっているあの浴衣。新品だし、ネットのフリマで売ってみようか。でもな、せっかく気に入って買ったものだし。  どこかに着ていくところないかな、マジで。
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