An endless road ひっくり返った朝と夜

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 物心ついたときには既に、うっかりした子供だった。  幼稚園で粘土で動物を作ることになったとき、シマウマの縞をボーダー柄に塗ってしまった。先生方が会議をした結果、ひとり居残りで、シマウマを白に塗りなおし、縞を縦に塗る作業をやらせられた。  お面を被って滑り台を下りて、途中で落ちて腕を骨折した。  小学校に上がっても、校門のところで、ランドセルを家に忘れたことに気づいたりする子供だった。  そういううっかりエピソードには、枚挙にいとまがない。  でもかと言って、それで凹んでいたかというと、そんなことはない。私は、そんな天才的なミスを連発する自分が大好きだった。なぜなら、周りのみんなが笑ってくれたからだ。  当時、私は世田谷の社宅に住んでいて、家族と家族の距離がとても近かった。同世代の友達も、その親御さん世代も、私のうっかり自慢を聞いて、腹を抱えて笑ってくれた。 「蒼子ちゃんはひょうきんな子ねえ!」  ひょうきん、というありがたい称号まで授かった。  そんな幸せな日々が続いたのも、小学校一年の秋に転校するまでだった。
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