An endless road ひっくり返った朝と夜

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 転校すると聞いて、周囲のひとは大人も子供も悲しんでくれた。お別れ会をあちこちで開いてくれて、その場でも、まぬけな私は主人公になっていることに浮かれていた。次の小学校でも、楽しくやれると信じて疑わなかった。  新しい住まいは、新興住宅地のベッドタウンだった。  小学校の最初の日、どうやって学校に行ったのだか覚えていない。でもきっと、母と一緒だったはずだ。  帰りのことはよく覚えている。母はとっくに帰ってしまい、女の子たち三人と校門を出たのだ。学校からわりとすぐのところにT字路があって、右手は川を渡る橋、左は上り坂になっていた。 「私、たぶんこっちだと思う。」  私は右手の橋のほうを差した。女の子たちの顔色が変わる。 「蒼子ちゃん、そんなわけないよ!」 「絶対、こっちだよ!」 「橋の向こうは学区外だもん!」  そのときになって初めて、家への帰り道をまったく覚えていないことに気づいた。三人の女の子たちは、親切にも、一緒に学校に戻って、先生に事情を説明してくれた。  担任の女の先生は、女の子たちを家に帰らすと、地図で私の家を調べてくれた。先生が調べているあいだ、「落書きでもしてて。」と言われて渡された紙に、米粒のような字で、ばか、あほ、まぬけ、と書き続けた。
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