12人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
再び自転車を走らせると、紗英ちゃんの家に到着した。チャイムを押そうとしたら突然玄関の扉が開いて、紗英ちゃんの顔が覗いた。
紗英ちゃんのご家族に挨拶をしてから、紗英ちゃんの部屋に向かう。すでに愛莉ちゃんは自分の部屋にいるかのように寛いでいた。
私は、愛莉ちゃんの隣に座ると膝の上に乗せた手を握りしめて言った。
唐突だと自分でも思うけど、後になったら言い出せないかもしれないから。
「あ、あのね! 2人に言うことがある」
「うん」
私を見つめる2つの顔が同時に縦に動く。
「私の恋ね、もう始まってた。昨日、2人に話聞いてもらって気づいた。ありがと」
「きゃー。おめでとー!」
両側から抱きしめられる。暑いけど嬉しい。そして、ちょっと恥ずかしい。
「やっと気づいたかー!」
紗英ちゃんはそう言いながら、私の頭をよしよしと撫でている。
「知ってたの?」
「そんなの見てたらわかるよ。太田のこと見てる優花、恋する乙女だったもん。
今度は、こちらからも大事なお知らせがあるよ。はい、愛莉さんどうぞ!」
愛莉ちゃんの方を見れば、なぜか胸を張っている。
「今度の花火大会、私は颯佑と2人で行くから、優花は坂本達と4人で行って!」
花火大会……4人……。えええー!?
「3人で行こうねって言ってたよね! ねえ、4人て誰!? ちょっと、なんでニヤニヤしてんの~」
「優花、何慌てんの? 花火大会の前に登校日もあるよー?」
「花火の時はさ、今日みたいにかわいい格好で行くんだよー」
「あ、スカートもいいかもよ?」
恋が始まっていたことに気づくだけでも、こんなに大変だったのだ。
これからもっといろんなことがあるだろう。
だけど、今のこの幸せな気持ちはずっと忘れたくない。大切にしよう。
【了】
最初のコメントを投稿しよう!