恋のはじまり

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再び自転車を走らせると、紗英ちゃんの家に到着した。チャイムを押そうとしたら突然玄関の扉が開いて、紗英ちゃんの顔が覗いた。 紗英ちゃんのご家族に挨拶をしてから、紗英ちゃんの部屋に向かう。すでに愛莉ちゃんは自分の部屋にいるかのように寛いでいた。 私は、愛莉ちゃんの隣に座ると膝の上に乗せた手を握りしめて言った。 唐突だと自分でも思うけど、後になったら言い出せないかもしれないから。 「あ、あのね! 2人に言うことがある」 「うん」 私を見つめる2つの顔が同時に縦に動く。 「私の恋ね、もう始まってた。昨日、2人に話聞いてもらって気づいた。ありがと」 「きゃー。おめでとー!」 両側から抱きしめられる。暑いけど嬉しい。そして、ちょっと恥ずかしい。 「やっと気づいたかー!」 紗英ちゃんはそう言いながら、私の頭をよしよしと撫でている。 「知ってたの?」 「そんなの見てたらわかるよ。太田のこと見てる優花、恋する乙女だったもん。 今度は、こちらからも大事なお知らせがあるよ。はい、愛莉さんどうぞ!」 愛莉ちゃんの方を見れば、なぜか胸を張っている。 「今度の花火大会、私は颯佑と2行くから、優花は坂本達と4人で行って!」 花火大会……4人……。えええー!? 「3人で行こうねって言ってたよね! ねえ、4人て誰!? ちょっと、なんでニヤニヤしてんの~」 「優花、何慌てんの? 花火大会の前に登校日もあるよー?」 「花火の時はさ、今日みたいにかわいい格好で行くんだよー」 「あ、スカートもいいかもよ?」 恋が始まっていたことに気づくだけでも、こんなに大変だったのだ。 これからもっといろんなことがあるだろう。 だけど、今のこの幸せな気持ちはずっと忘れたくない。大切にしよう。 【了】
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