恋のはじまり

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私は勉強が苦手だ。特に主要五教科。国語はまあまあだが、数学は結構ひどい。 今も一応数学の授業を受けているけど、先生の説明が子守唄に聞こえる。 まあ、でも小学校6年生までの勉強ができれば大人になってからも、日常生活には困らないって聞いたことある。 つまり、算数が理解できていたら専門的な職業を選ばない限り問題ないと言うことだろう。 今の成績でもどこかの高校には入れるはず。 一応、真剣に授業を受けている雰囲気だけでも醸し出しておこう。私にできる精一杯。眠気との戦いだ! 頑張れ、私。 自動的に降りてくるまぶたを指で持ち上げなから必死で板書していると、ふと視線を感じた。 右側を見ると、隣の席の太田くんが顔を正面に戻すところだった。 見られた? 授業が終わると、案の定太田くんに話しかけられた。 「岩瀬さ、授業中に変顔してなかった? 白眼むいたり、あかんべーしたり」 やっぱり見られてたか。 「変顔はしてないと思う。頑張って授業受けてた」 太田くんは、うひゃひゃと笑っている。そして言った。 「今日のとこはわかったの?」 「今日のは、わりとわかった気がする! 頑張って板書した!」 私は、胸を張ってさっき必死で板書したノートを太田くんに見せた。 「そんなことで威張ってんじゃねーよっ。また、わかんないとこあったら言ってよ」 苦笑している太田くんが、数学がすごく得意なことは有名。本人によると数学しかできないらしい。 数学ができたらもう充分だと私は思う。
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