恋のはじまり

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太田くんとは、2年生で初めて同じクラスになった。 でも、初めての感じはしなかった。 1年生の時からすごく目立っていたからだ。 うーん、この表現は語弊がある。 太田くん自身は、そんなに派手なタイプではない。身長は普通よりちょっと高くて、いつも見えない何かを纏っていた。 スピリチュアルとかそんなのは全然わからないのだけど、太田くんだけ明らかに周りの空気に色が付いているのだ。 大量の水で青い絵の具を溶かしたような色。寒色なのに、フワッとして暖かそうなものにいつも囲まれていた。 理由はわからないけど、すごく目を奪われた。 他の人が何も気にしていないのが不思議だった。 同じクラスになって近くで見る太田くんは、もう水色のものは纏っていなかった。 絵が上手くて、数学が得意で、ニコニコしていて、いつも誰かと笑っている。不機嫌な顔とか怒ったところは見たことがない。 多分、太田くんのことを嫌いな人はいない。 皆に優しいから、隣の地味な女子に数学を教えていても誰も気にしない。 帰宅して夕食を食べた私は、数学を復習してみることにした。ちなみに、いつもそんなことはしない。なるべく数字は見たくないから、課題が出た時に仕方なくやるだけだ。 なぜかわからないけど、数学をやりたい気分になったのだ。もうすぐ夏休みだけど、明日の天気は雪だろうか。 あれ? なんか、数学なのにいつもよりわかるかも。 気分が盛り上がってきて、まだ期限が迫っていない塾の宿題も広げてみた。 今なら、ちょっとできそうな気がする。 なんと、気づいたら日付が変わるところだった。 やっぱり理由はわからないけど、太田くんにお礼を言いたくなった。
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