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翌日、隣の席に座った太田くんを見てすぐにお礼を言おうと口を開いた、その時……。
「あ、太田。この前教えてくれた配信、面白かった」
坂本くんが太田くんのところにやって来た。
2人は楽しそうに話している。
言いそびれてしまった。
──待って、私。太田くんに何を言おうとしてたの?
太田くんがしてくれたのは「わかんないとこあったら言ってよ」と声をかけることだけだ。他に、具体的な何かがあったわけではない。
でも、太田くんのお陰で数学の勉強が捗ったのは事実で……。んんん?
「……わせ。岩瀬!」
「な、ななななな何?」
声のする方を見ると坂本くんはいなくなっていて、太田くんが私に話しかけていた。
「さっき、俺に何か言おうとしてなかった?」
「あ? ああ、おっ、おはようって言おうとしてた。太田くん、おはよう」
私が必死に謎の発言をすると、太田くんはうひゃひゃ、と笑った。
「それ、今日3回くらい言ってもらったけど?」
えええー!? そうだったのか。おかしいヤツだと思われている? どうしよう。
私が混乱しているとチャイムが鳴った。
チラッと隣を見ると、太田くんは何事もなかったかのように前を向いて座っていた。
私だけ、赤くなったり青くなったりしている。
その時から、私は今までどうやって太田くんと接していたかよくわからなくなってしまった。
そして、そのまま夏休みが始まってしまった。
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