第1章 姉の婚約者

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この男の言うことは、理解できないことばかり。 姉の婚約者の彼はよく家に遊びに来ていて、わたしとも顔を合わせることも多かった。 「姉は今外出してますよ」と教えれば、「知ってる」と平然と答えるし。 「姉の部屋は隣ですよ」と言えば、「それも知ってる」とわたしの部屋に入ってくる。 意味がわからない。 「意味がわからないです、松葉さん」 「わからなくていいよ、今はね」 笑顔を裏にどんな思いを秘めているのか謎だ。 「じゃあ、彼氏と別れたら教えてね、柚葉(ゆずは)ちゃん」 「名前で呼ばないでください」 姉のことは「芝池(しばいけ)さん」と呼ぶくせに。 わけがわからない。 姉の婚約者は、こんな謎な男だった。
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