第1章 姉の婚約者

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「そう言えばね、この前歩くんが紹介してくれた小学生の女の子いるでしょ?」 「あーうん。アミちゃんでしょ?俺の友達の兄ちゃんの子ども」 「そうそう。その子がね、この前ピアノの体験に来て、来月からレッスン始めることになったんだ」 「そうだったんだ。よかった。その子のお母さんが、近所でピアノ教室探してるって聞いたから伝えておいて」 「ありがとう。前に体験来てもピアノ触らずに帰っちゃった人もいてね。新しい生徒さん見つけるの大変だから助かったよ」 歩くんは本当に優しい。 わたしが離れるまでずっと抱きしめてくれる。 歩くんは彼氏だけど、ときどきお兄ちゃんみたいな存在にも感じられた。 「眠くなっちゃった?」 「……うん」 「じゃあ、俺のベッド使いなよ。少ししたら起こしてあげるから」 どんなときでもわたしを甘やかしてくれる彼氏に、わたしはとことん甘えてしまう。 そっと頭をなでるぬくもりを感じながら、自分のベッドよりも安心して寝られる心地のよさに幸せを感じていた。
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