第1章 姉の婚約者

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「どうしてそれを?」 「だって、キミさ。俺と会った後は決まって彼氏のところに行くでしょ?わかりやすいよねー」 わたしのことをわかりやすいなんて言う人は、この男だけだ。 わたしは基本的に人から表情が変わらないから、何考えているかわからないと言われる。 だから、親しい人は片手で数えるくらいしかいない。 そんなわたしのことをわかりやすいなんて言うこの男は、本当にわからない。 「彼氏に俺の愚痴でも聞いてもらってた?俺のこと嫌いだもんねー、キミは」 そう、わたしは、嫌いだ。 この男のことが。 姉の婚約者である、この男が。 「でも、俺は嫌いじゃないよ?」 クスリと笑うその男は、心臓に悪い。 わたしの心臓をおかしくさせる。
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