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「あーぁ。たっくんがアズと友達にならないかな」
ドラマのCM中にぽつりと呟く。
「何それ、突然。俺、一般人」
本人の言う通りたっくんは普通の高校生で、そしてアズは人気俳優で今観ているドラマの主人公だ。
「たっくんはちゃんとしたらイケメンだと思うし、芸能人になれると思う」
目の前の二歳年上の幼馴染は外見に無頓着というか、その伸びすぎた前髪と眼鏡でいつも顔を隠している。私の前では普通に喋るけど、普段は無口で、なんとなく怪しい雰囲気が漂っている。
「たっくんがモデルとかになって、それで俳優になるでしょ、それでアズと共演して友情が芽生えるの。そうしたらたっくんの幼馴染の私もアズに会えるんじゃないかなって」
「他人任せすぎ」
たっくんが笑う。
「えー、でも私、アズに会わせてくれるならなんでもするよ?」
「なんでも?」
「うん、なんでも」
お互いわかっている。こんなのはCM中のなんでもないやりとりだ。
アズはイギリス人の父と日本人の母を持つ帰国子女で、かっこいいという言葉では足りないくらいの美しい男性。その美貌と演技力で、若手俳優の中でも特に勢いがあると多くのメディアが取り上げている。だからドラマに映画にCMにひっぱりだこで、テレビで彼を見ない日はない。
つまりただの高校生の私からしたら雲の上の存在で、そんな人と同じ空気を吸えるなんて思っていない。
アイドルではないのでコンサートなどもないし、舞台にも出ていないから観劇もできない。私にできるのは雑誌を買ったりテレビや映画を観ることだけ。映画の舞台挨拶の抽選に応募しているけど、ものすごい倍率で当たる気がしない。
たいした推し活ができていないからなんだか申し訳ない気もするけど、私にとってアズはいわゆる「推し」なのだと思う。
「一度でいいからアズに会ってみたいなー」
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