23人が本棚に入れています
本棚に追加
「ゆりちゃん。ここに特別試写会の招待券が一枚あります。誰を誘ってもいいと言われています。当然そこには主演のアズが来ます」
「行きたい行きたい行きたい! お願いします! 巽様、どうか、私に」
ここ最近訪れていなかったたっくんが私の部屋にやってきた。
いつの間にか俳優になって、大学生と俳優業の両立で忙しいらしい。
だけど相変わらず前髪は長く、普段の見た目はびっくりするくらい以前と変わってない。映画の予告でちらりと映る姿とは全然違い、プロのスタイリストさんはすごいなと感心する。
しかし今は見た目のことなんてどうだっていい。試写会だ。
「ゆりちゃん、覚えてる? アズに会えるならなんでもするって言ったの」
「もちろん! なんでもする! だから、お願い」
ほぼ土下座に近い体勢でお願いする。
「じゃあ、結婚して」
「えっ?」
下げていた頭を上げ、たっくんを見る。
聞き間違い? 今、結婚って。
「十八歳になったら俺と結婚して」
聞き間違いではない。たっくんは確かに結婚と言った。
「なんで?」
「好きだから」
なんだこの状況。アズに会いたいと懇願していたはずが、告白というか、プロポーズされている。
「おーい、ゆりちゃん? 聞こえてる?」
「え、待って、好きっていつから?」
「ずっと。だからゆりちゃんの望みを叶えるために俳優になった」
たっくんはなんでもないことのように言った。
最初のコメントを投稿しよう!