第1話

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「ゆりちゃん。ここに特別試写会の招待券が一枚あります。誰を誘ってもいいと言われています。当然そこには主演のアズが来ます」 「行きたい行きたい行きたい! お願いします! (たつみ)様、どうか、私に」 ここ最近訪れていなかったたっくんが私の部屋にやってきた。 いつの間にか俳優になって、大学生と俳優業の両立で忙しいらしい。 だけど相変わらず前髪は長く、普段の見た目はびっくりするくらい以前と変わってない。映画の予告でちらりと映る姿とは全然違い、プロのスタイリストさんはすごいなと感心する。 しかし今は見た目のことなんてどうだっていい。試写会だ。 「ゆりちゃん、覚えてる? アズに会えるならなんでもするって言ったの」 「もちろん! なんでもする! だから、お願い」 ほぼ土下座に近い体勢でお願いする。 「じゃあ、結婚して」 「えっ?」 下げていた頭を上げ、たっくんを見る。 聞き間違い? 今、結婚って。 「十八歳になったら俺と結婚して」 聞き間違いではない。たっくんは確かに結婚と言った。 「なんで?」 「好きだから」 なんだこの状況。アズに会いたいと懇願していたはずが、告白というか、プロポーズされている。 「おーい、ゆりちゃん? 聞こえてる?」 「え、待って、好きっていつから?」 「ずっと。だからゆりちゃんの望みを叶えるために俳優になった」 たっくんはなんでもないことのように言った。
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