第1話

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ちょっと冷静になろう。 たっくんは家が隣で幼馴染で幼稚園の頃から知っている。お互いの部屋を行き来することも当たり前で、もう兄妹みたいなものだと思っていた。 たっくんのことは好きだけど、それは恋愛的ものとは異なる家族愛のようなものな気がする。 「あの、結婚するとたっくんの俳優業に支障が出るんじゃないかな?」 「支障が出るならやめるから大丈夫。アズとも共演したし、目的は果たしたから」 「でもっ」 「俺と結婚すると、アズが結婚式に来てくれるよ。ゆりちゃんのこと話したら、約束してくれた」 結婚式にアズが? えっ、私のためにアズが来てくれる? 雲の上の人が? 私を祝福してくれるの? え、それもう、結婚式どころじゃなくない? 「それで揺られると妬けるんだけど」 「だって、アズだよ?」 「うん。あのアズだよ。この機会を逃すともう生で見ることはできないだろうね」 ごくりと息をのむ。 確かにそうだ。こんなチャンスはもうない。 とはいえ、結婚って……。 だってたっくんそんな素振り見せたことなかったし。一緒に部屋で映画観て、二人で寝落ちしても何も起こらない関係だったのに。 たっくんと結婚……。ダメだ、想像できない。 でも、アズを見てみたい。いや、というか、この二択はさすがに酷くない? なんでもすると言ったけど、真っ当な人間としてこれは頷いてはいけない気がする。結婚ってそうやって決めることではないはずだ。
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