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ちょっと冷静になろう。
たっくんは家が隣で幼馴染で幼稚園の頃から知っている。お互いの部屋を行き来することも当たり前で、もう兄妹みたいなものだと思っていた。
たっくんのことは好きだけど、それは恋愛的ものとは異なる家族愛のようなものな気がする。
「あの、結婚するとたっくんの俳優業に支障が出るんじゃないかな?」
「支障が出るならやめるから大丈夫。アズとも共演したし、目的は果たしたから」
「でもっ」
「俺と結婚すると、アズが結婚式に来てくれるよ。ゆりちゃんのこと話したら、約束してくれた」
結婚式にアズが?
えっ、私のためにアズが来てくれる?
雲の上の人が?
私を祝福してくれるの?
え、それもう、結婚式どころじゃなくない?
「それで揺られると妬けるんだけど」
「だって、アズだよ?」
「うん。あのアズだよ。この機会を逃すともう生で見ることはできないだろうね」
ごくりと息をのむ。
確かにそうだ。こんなチャンスはもうない。
とはいえ、結婚って……。
だってたっくんそんな素振り見せたことなかったし。一緒に部屋で映画観て、二人で寝落ちしても何も起こらない関係だったのに。
たっくんと結婚……。ダメだ、想像できない。
でも、アズを見てみたい。いや、というか、この二択はさすがに酷くない?
なんでもすると言ったけど、真っ当な人間としてこれは頷いてはいけない気がする。結婚ってそうやって決めることではないはずだ。
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