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彼女、か……。
考えたこともなかったけど、どうなんだろう。
ここで断ったらたっくんとこれまで通り仲良くできないかもしれない。それは絶対に嫌だ。
結婚と比較するとだいぶハードルは下がる。だから、彼女になるくらいなら大丈夫な気がする。
たっくんは私が嫌がることはしないし、今までと関係が大きく変わるわけではないと思う。たぶん。
こんな感じで決めてしまっていいのか本当はよくわからないけど、たっくんならなんとかなる気がする。だから、ここは勢いに任せてしまおう。
よし、決めた。
「わかった。彼女になる。だから」
試写会のチケットを、と言う前にたっくんが私を抱きしめていた。
今までと違う距離に戸惑う。たっくんの身体は大きくて、包まれている心地がした。
「嬉しい」
耳元で柔らかく囁かれ、なんだかくすぐったくて恥ずかしい。
「たっくん、苦しいよ」
そう言うと、パッと身体が離れた。
ほら、嫌がることはしない。大丈夫。
と思ったら、たっくんは私を見つめていた。
「本当に彼女になる?」
「うん、だから……」
「じゃあ、先に証明して?」
「え?」
「彼氏にキスして」
え、キス……?
たっくんとキスするのは、正確には初めてではない。なぜなら、幼稚園の頃の私達がキスしている微笑ましい写真を何枚も見たことがある。だけど、それは物心つく前の話で、覚えているわけではない。
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