前編

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 国王陛下は馬上槍試合をはじめ勇壮な催しが大層お好きで、先日も武芸の大会を開催された。  若き貴公子エドワード・ホワイトフォートは剣の模擬試合に出場し、その勇姿は人々の心に印象深く残った。  宮廷に上がったときから端正な外見は話題になっていたようだけど、そういった催しに参加したのは初めてで、輝く甲冑を身に着けて戦うエドワードは、物語に登場する騎士のようだと評判になった。  それに加えて……。 「あのお方って、見目麗しくて頭脳明晰で朗らかで、欠点が見当たらないわよね」 「過ぎたる点はあるけど?」 「やだもう!」  わたしは唇を噛む。  本当はあの試合には、わたしの兄であるリック――リチャード・アーチフィールドが出る予定だった。  女たらしのリックは、試合の前夜に「詳しくは話せないが、ちょっといやらしい理由で」(と、妹であるわたしにぬけぬけと言った!)腰をおかしくして、体型が同じくらいの年下の友人であるエドワードに「新品の、とびきり恰好いい甲冑を貸してやるから!」と言って代役を頼んだらしい。  その最新の甲冑がいけなかった。 「すごかったわよねえ」 「ニョキッと飛び出して!」 「陛下のよりも主張してたわよ」  大逆罪だわあ、と三人は大はしゃぎする。
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