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「ほんと、あんなコッドピースを見たのは初めてよ」
「本体に合わせて作ったのかしら?」
「やだあ」
あれはわたしの愚兄のだから! と言ってしまいたかったが、それはそれで藪にいる蛇をつつきそうなので、ぐっとこらえた。
わたしはリックを恨んだ。恥知らずな鎧を発注したことも、エドワードに代役を頼んだことも。
甲冑に詳しいわけじゃないけど、男性の大事なところを覆う部分の意匠は、わたしが小さいころはまだあんなふうじゃなかった。
ところが近年は、衣類のコッドピースと同様にどんどん誇張されるようになってきて、リックが新しく作った鎧のそこには、先端が丸くなった大きなツノのようなものが上に向かって猛々しく生えていた。
そんなものを着用して大勢の前で戦ったため、エドワード・ホワイトフォートは以前にも増して注目を浴びるようになってしまったのだ。
特に、股間のあたりに……。
王宮では他の男性たちと同じような現代風のコッドピースを着けているだけなのに、ご婦人たちから「やっぱりなんだか大きいわよね~」などと囁かれている。
「エドワードさまって、陛下の覚えもめでたいし、今のところ浮いた話もないし……いいかも」
獲物を定めたメス狼のようにリズが瞳を光らせると、キャシーとマーゴは声を弾ませて後押しをした。
「リズ、行っちゃいなさいよ」
「美男美女でお似合いよ!」
リズは、まんざらでもないような顔をして「悪くはないけど……」と小首をかしげる。
「あんなにご立派な方を、私のような華奢な者が受け止めきれるかしらぁ?」
また耳をつんざくような甲高い悲鳴が上がり、わたしはすぐにでも部屋を出ていきたい気持ちでいっぱいになった。
「そういえば」
不意にマーゴの視線がこちらを向いたので、わたしは慌てて下がりきっていた口角を上げる。
「セシリーは、エドワードさまと知り合いなの?」
「えっ……」
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