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「本当、助かった‼︎ありがとう」
「別に…たまたまだし」
風で飛ばされた私の千円札が彼の顔面に張り付いた。それが私たちの出会いだった。
「無職に成り立てで、貴重な千円なの‼︎」
「そっか。そりゃ貴重だわな」
ウェーブがかったミルクティー色の髪が真夏の太陽を受けてキラキラと光る。白Tにハーパンのシンプルな格好から伸びる長い手足。人懐っこい笑顔。
「それじゃ」
「ねぇ、この辺の人?」
「ううん。旅行で来た」
「誰かと一緒?」
「1人だよ。退職の憂さ晴らしで一週間‼︎」
「へぇ」
「じゃあね」
「…ねぇ、時間ある?」
「ん?」
「金張り付くも多少の縁…ってさ」
「ははッ。何それ?」
「俺、裕貴。そっちは?」
「…夏子」
「ナツコ⁈『夏』に子どもの『子』?」
「そうだけど、何か?」
「誕生日は過ぎた?これから?」
「……明後日」
「じゃあ、前祝い‼︎飯食い行こうぜー」
満面の笑みで手を引かれ歩き出した。普段ならこんなナンパについて行ったりなんて絶対にしないのに…。何でだろう?嫌じゃない。むしろワクワクしている。
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