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夜、ハワイの先住民族の文化を元にしたファイヤーショーディナー、「ルアウ」を観ながら、僕は伝統的な豚の蒸し焼き「カルアピッグ」を食べていた。白峯さんや社長も近くの席で楽しんでいる。
まだ、クライアントからは素材も連絡も来ていない。流石の僕も心配になってきていた。いや、最初から心配ではあったけれど。
(リリースには間に合うのか? クライアントが今回も無茶振りをして徹夜の作業で間に合わせなければならないのか? 飛行機の中で連絡が来ていたらどうする?)
思考は巡る。
(国際電話をする? いや、ハワイから掛けたらお金かかるし。社長はほっとけっていってたもんな)
本来であれば上の人が責任を被ってくれる。もしここで機会をロストしたとしても社長の判断のため僕に責任はないだろう。責任を問われないからと言って、気にならないわけではないけれど。
ふと、白峯さんの言葉を思い出す。
“クライアントは神ではありません”
では、どんな対応をすればよかったのだろうか。
ーーザワザワザワッ
眼前のショーでは新人らしき細い体の男性がミスをして、火の付いた棒を落としてしまった。しかし、それをベテランがうまく演出に取り入れてカバーしている。
(僕たちの関係も、きっとそうだった)
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