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一体、彼は何様なんだろう。ちゃんと謝る事も出来ないなんて。
いつもこうやって人に尻ぬぐいをさせているんだろうか。
「無理です。これからここで人と待ち合わせています」
中川さんには申し訳ないけれど、なんで私がこんな男の言う通りにしないといけないんだか。
「誰と会うんだ」
彼が聞いて来た。それが人にものを尋ねる態度?私はさらに怒りが増して来た。それにまだちゃんとした謝罪の言葉もない。
「あなたに関係ないでしょ」
「関係はある。その服で人に会うつもりか」
そう言われて、ハッとする。友達と会うならまだしも、
面接にこんな格好で行ける訳がない。私は途方にくれた。
「大丈夫です。自分でなんとかしますから」
私はソファから立ち上がった。何処かで服を買おう。でも何処で。
彼がテーブルの上の、履歴書に目を向けた。
履歴書にも紅茶の染みが付いていた。(あ~、もうダメだ)
泣きたい気持ちになって来た。
履歴書と一緒に今日の面接相手の名刺もそこにおいてあった。
「西島に会うのか?」
その名刺を手にして、彼が私に尋ねる。
「そ、そうですけど」
そう聞かれて、咄嗟に答えてしまった。
彼がポケットからスマホを取り出して、電話をかけ始めた。
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