最悪な出会い

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「この茶葉は、我が社で特別に栽培している。産地はヒマラヤの近くだ」 彼が意外な程、穏やかな口調でそう言った。 栽培してるって、自家茶葉?さっき私にかけられた紅茶もこの茶葉だ。 私はブラウスの匂いを嗅いでいた。 「飲みますか?」 彼の手には、彼の会社のものらしい紅茶のペットボトルが握られていた。 「結構です」 飲みたい気持ちを抑え、私はそっぽを向いた。 彼がクスッと笑って、ペットボトルを私の前のテーブルに置いた。 この車は庶民の車には付いていない設備が色々とついていた。 私の座席の前にはテーブルがあって、 そこにはお手拭きだの、コップだのが備え付けられていた。 彼の前のテーブルにはPC、そして前の席のヘッドレストには モニターが付いていて、同時に色々な画面が動いていた。 そして、彼は絶え間なく何処かへ電話をしていた。 こんな移動の合間にどれだけの仕事をこなしているんだろう。 CEOなんて、人に仕事をさせて自分は指示するだけで楽しているんだろうと 思っていた私の意識が少し変わっていた。
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