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車が着いたのは、さっきのホテルの系列の別のホテルだった。
なんとホテルの梯子。
彼と中川さんは足早にホテルに入って行く。
何かの予定時間にギリギリなのかもしれない。2人が扉の前に立ったと同時に
女性がホテルから出て来て、琴宮さんと言葉を交わしてから、私の方に向かって来た。
「川島様。飯田と申します。琴宮から申し付かっております。
こちらへどうぞ」
彼女が私に名刺を差し出した。CEO秘書と肩書に書かれている。
「あ、はい。ありがとうございます」
まだ、このまま彼の言う通りにするのは腹立たしい気持ちだったけど、
彼女の後に付いて行く。
通されたのは、スイートルーム。今までにこんな広いホテルの部屋には
入った事がない。
私のスーツケースは既にこの部屋に運ばれていた。
私達の後から、いつの間にかルームサービスを運ぶ人が付いて来ていて、
テーブルに軽食や、スイーツを並べて出て行った。
隣の部屋のテーブルの上にはブラウスが何枚か置いてある事に気が付いた。
こんな短い時間でブラウスを準備してしまうなんて、全てにおいて仕事が早い。
早く着替えて帰ろう。私は心の中で呟いた。
「川島様、ブラウスを用意させて頂きましたので、
サイズが合うものをお召しください。それと髪に紅茶がかかっていますので、シャワーを浴びてください」
丁寧な言葉遣いに感心する。社長相手とかなら、自然に出て来るのかもしれないけれど、私みたいなのにも、敬語を使い続けられるなんて尊敬する。
え、シャワー?確かに私の髪からは、ダージリンの香りが漂っていた。
髪に触ってみる。シャワーを浴びる程でもないけれど、
ちょっとベタベタしていて気持ちが悪かった。
これでは電車には乗れないかも。
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