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最悪な出会い
ホテルのロビー、フカフカのソファに私は深く腰掛けていた。
なんだか凄く疲れていた。
流石高級ホテルのソファ、気持ち良過ぎて眠気が私を襲う。
でも今は寝ている場合じゃない。
今にも閉じてしまいそうな瞼を、必死で開ける努力をしていた。
最近まともな睡眠時間が取れていなかった。眠気が襲うのも当たり前だ。
今日、仕事が決まらなかったら、今夜は野宿になってしまうかもしれない。
そんな事は絶対に避けたい。避けなければいけない。
今、このホテルのロビーにいる人達の中には、そんな緊迫感を漂わせている人はいない。高級ホテルのロビーだから、当たり前。
(あぁ~)心の中で溜息を吐く。私だけが、切羽詰まっているんだ。
約束の時間まで、あと30分。
机の上に置いた履歴書を再度確認する。
結婚式に参加した帰りなのだろうか、可愛いドレスを着た女の子が、
自分のドレスのスカートが膨らむのが楽しいらしく、
私の傍でぐるぐると回っていた。
それを見ている内に、私の目が回りそうになっていた。
やばい、眠気が。睡魔と闘う私。
回っている本人も目が回ったらしく、その場でフラフラし始めた。
大丈夫かなと気になってそちらに目を向けていた。
案の定、彼女の身体がグラっと傾いた。あ、と思ったその時、
私の鼻にダージリンの香りが漂ってきた。
あ、いい香り。凄く良いダージリンの茶葉を使っている。
そう思いながら、その香りを思いっきり吸い込んだ。
「ん、え、」次の瞬間、その香りは私の着ていたブラウスから発せられている事に気が付いた。
私の白いブラウスが紅茶色に染まっていた。
一体、何が起きたのか。理解出来ないままに、ブラウスを見つめる。
直後、私の髪の毛の先から、紅茶が滴り落ちて来た。
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