854人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
一緒に
それから俺たちはプライベートでは少し言葉も崩すようになった。
と言ってもほぼ敬語だし、なかなか名前で呼ぶのも慣れないのだが。
「周防先生!」
「あ、はいっ!!」
廊下で不意に呼び止められてビクッと跳ねてしまうと、先生はくすくすと笑う。
そして、コホンと小さく咳払いをすると、一枚のメモを差し出した。
「三森くん、三十七度八分あってお家にも連絡済みです。ちょっとお迎え時間掛かるそうなので保健室でそのまま休んでもらって引き渡しますね」
「あ、ありがとうございます!じゃあ、ランドセルとか持って行きますね!」
仕事!!と今は落ち着いてメモを受け取ると、すぐにしっかり者の女子数人が近づいてくる。
「先生、何?悠太?」
「あぁ、早退だからランドセルとか荷物準備してくれるか?」
メモをポケットにしまうと、彼女たちは嫌がることもなく頷いてくれた。
「はーい!私保健係だから持ってくよ!」
「私も手伝うー!」
「こら!廊下は走らない!ありがたいけどそんなに急がなくていいから」
パタパタと走り出す彼女たちに声を掛けると、
「「はーい!」」
彼女たちはすぐに止まって歩いて教室に入っていく。
「じゃあ、荷物お願いします」
「はい!悠太のこと、よろしくお願いします」
児童たちに声を掛けられながら笑顔で返して歩いていく先生を見送りつつ、先生が来てくれて(悠太は心配だけど)少しだけ姿を見て話せたことが嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!