何で?

7/10
846人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
 お仕置き……先生の口から聞いたこともない言葉に少しドキッとする。  だが、先生は「冗談ですよ」と笑ってゆっくり俺の体を起こしてくれた。  そうやっていつも通りにされたことで、安心するよりももどかしさを感じてしまうのは……やはり俺がその先を求めているからだろうか?  水をもらって、先生が作ってくれたしじみのお吸い物を飲む。 「あんな風になるなら外で飲まないようにってした方がいいですか?」  笑って軽くキスはしてくれるけど、甘く大人な雰囲気にはしてくれない。  しかも、「飲むな!」と命令されてみたいなんて……俺はどうしたのだろう。 「航生さん?」  不思議そうな顔の先生に覗き込まれてハッとした。 「辛いでしょうから、もう少しここで休んでいて下さいね」  優しくよりたまには少し強引に暴いて欲しい気もするのに。  額にキスをして穏やかな笑みを向けられると、ただ頷いてしまう。 「僕は少し洗濯物を干して掃除してくるので……ゆっくりしていて下さい」  こんな優しい先生にもっと恋人っぽく……エッチだってしてみたいなんてどう言えと?  先生は前の恋人とも性的な関係はなしだったのだろうか?  佐藤くんが教えてくれた準備もだけど、言うのだってかなりハードルが高そうだ。  パタンとドアが閉まって立てた膝に顔を埋める。  膝にある布団から先生の匂いがした気がしてキュンとしつつ、落ち着かない疼きを感じてしまった。
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!