嫌なのに

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「じゃあ、明日は算数のテストがあるからな!プリントと教科書もちゃんと見直して勉強しとけよ!」  教壇に立ってクラス中を見回すと、「えー!」と嫌そうな声があがる。 「このテストも終わったら来週からはプールも始まるし、先生たちも準備頑張ってるから!みんなもやれるだけやれ!な?」  笑って見せると、「イエーイ!プールー!」とクラスの男子たちがはしゃぎ出した。  俺のクラス、五年三組は元気な子が多い。 「はいはい、静かに!よし、じゃ、帰るか!」 「きりーつ!礼!」  号令係の声に合わせてみんなが立ち上がって「さよーならー!」と元気な声が響く。 「さようなら!また明日!元気に来いよー!」  教室のドアの前に立つと順番にランドセルを背負った子供たちが並んで俺とハイタッチをして教室から出て行った。  全員を送り出すとザッと忘れ物だけをチェックして一旦鍵を締める。  俺も降りて職員玄関で靴を履き替えると、グラウンドに出た。 「周防先生、さっき先生のクラスの熊野くんが忘れ物をしたと探していましたよ?」 「え?そうなんですか!?ありがとうございます!」  頭を下げて慌てて足の向きを変えてクラスの下駄箱へと走る。  ザッと見たつもりだったが見落としていたのかもしれない。  思いながら感じた頭痛を堪えて小走りで下駄箱まで行くと、 「先生!ありがとー!」 「うん、もう忘れ物はないかな?」  ちょうど洋平(ようへい)(熊野くん)と養護教諭の深谷先生が出てきた。
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