嫌なのに

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「あ!スオー先生!」 「え?忘れ物って聞いて来たんだけど?」 「深谷先生が鍵開けてくれた!じゃ、また明日ねー!」  洋平が気付いてそのまま聞くと、踵を踏んでトントンと地面に打ち付けて靴を履いた洋平はさっさと手を振って走って行く。 「あぁ!全く落ち着きないなぁ。本当、すいません」 「いえいえ、元気なのは何よりです」  頭を下げると、深谷先生は微笑んで走って行く洋平を眩しそうに見つめた。 「あ!じゃあ、俺も下校指導行くので!本当、ありがとうございました!」  担当の先生が拡声器で話しているのが聞こえてきてハッとする。  だが、そんな俺の腕を深谷先生が掴んだ。 「……えーと?」  どう反応していいかわからなくて首を傾げると、深谷先生はパッと手を離して笑う。 「いえ。……あ、でも、戻ったら少しお時間いいですか?僕、保健室に居ますので」 「……はぁ」  よくわからないが、とりあえず頷いて外に出た。  一体何なのだろう。  もしかして、俺のクラスの子が何か深刻な相談でもしたのだろうか!!  それなら!と思いつつ、下校を始めた児童たちを見て、俺も担当の場所まで走った。 「やっべぇ!スオー先生!めっちゃ速いじゃん!」 「明日勝負しよー!」  それを見て素直に反応する子供たち。 「はいはい、明日な!だから、今は安全に帰って明日も元気に学校来いよー!」  ズキズキと頭が痛んだが児童の前では笑っていたかった。
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