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異国情緒漂う街は、東京から約40分電車に揺られた場所にある。
新調したばかりの財布をデニムのポケットに突っ込んで改札を抜けた。
無地の黒シャツは太めのデニムにしまい込み、腕には華奢なブレスレットを。シンプルに振りすぎない服装が好みだが、財布のなかは五千円札のみという無骨さだ。
薄さがウリのこの財布はクレジットカードなどを入れるとすぐに膨れて不格好になる。
スマホでプレイリストを流す。題名は「No.2」。中学生の頃に流行った曲をまとめている。その他に、初恋と叶わぬ恋を歌った曲を混ぜているのでNo.2だ。
「オネイサーン!イチゴ飴食べてって!」
中国の人のイントネーションは、中華街で聞こえる日本語の標準語だった。
じゃあ、と近付きひとつ買う。
コーティングに使われているべっこう飴はパリパリでイチゴは凍っている。食べるのには時間がかかりそうだ。
「占いもどう?ウチのセンセよく当たるよー!中入ると涼しいよー!」
仕事は午後休を取りふらっと横浜に来たものの、真夏の日なたは椿の肌をじりじりと焼いていたから、その誘いは魅力的だった。
「占い、いくらですか?」
「1000円よー!飴食べながらでいいよ」
さあさあと椅子に座らされ、冷やされた空気が体を包んだ。
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