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中華街には小籠包、イチゴ飴の店に次いで占い店が乱立している。
手相占いが多いようだったが、椿の入った店は珍しくタロット占いだった。
オレンジ色の明かりがランプにゆらゆらと揺れている薄暗い空間。
ステンドグラス製らしきランプは、漂うお香の煙を照らしている。
「占いたいこと、なに?」
エキゾチックな雰囲気の老婆が目をぐっと覗き込む。白檀だろうか、微かに甘い香りが遮った。
「ええと、じゃあ将来とかみてください」
「ミライね。ミライ知るにはカコ知らないとだから、カコからいくよ。前世ね」
「はい」
過去が幼少期ではなく前世とは。もちろん椿には前世の記憶がないので当たるも当たらないも全く分からないが、エンタメとして楽しむにはおもしろそうだ。
青いタロットカードを手に取った老婆は、ゆっくりとまぜていく。
「あんたのカコ」
ぱちぱちと数枚を椿の前に出して指を指した。
「生まれは今と同じ場所」
「東京ですか?」
「そう」
「女の子」
「昔も?」
「そう」
「お金持ち」
「へえ」
老婆は目を閉じてゆらりと体を動かした。
「キモノ着てる。日本の衣装。サムライはいない。サムライの次の時代」
「明治ですか」
「そう。そう……メイジ。」
老婆と目が合って、椿の胸には草原の中を抜けるような風がさぁっと吹いた。
「あんたの前世は、明治時代のお姫さまだよ」
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