最後の花火

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(この想いを、今夜伝えてみようかな……) たこ焼きを買いながら思った。オーストラリアに行ってしまうのに、迷惑かな。でも今夜伝えないと、次に会えるのはいつになるかわからないし。 グルグルと頭の中でそんなことを考えているなんて、夏希は知らない。焼きそばとイカ焼きの入ったパックを持って、「夏帆〜!」と私を呼んでいる。 「イカ焼きも買ったの?」 「ちょうど隣に店があっておいしそうだったからな」 「たこ焼き買ったよ。チーズ入り」 「チーズ入り?うまそ〜」 そんなことを話しながら歩く。左右には様々な屋台があり、金魚すくいやヨーヨー釣りなどを子どもたちが楽しんでいた。 「金魚すくい、お前下手だったよな」 一匹も金魚を捕まえることができず、半泣きになっている女の子を見ながら夏希が言う。彼の言う通り、私は金魚すくいに挑戦してもいつも一匹も捕まえることはできなかった。 「私が下手じゃなくて、夏希が特別上手だったんでしょ。大きな金魚、捕まえてたじゃん」 一匹も捕まえられず、拗ねてしまった私にいつも金魚を夏希はくれた。赤いヒラヒラとした尻尾を持った金魚は今でも元気で、玄関前に置かれた水槽の中で泳いでいる。
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