最後の花火

8/10
前へ
/10ページ
次へ
「ねえ、射的しようよ!大きい景品を取れた方が勝ち!負けた人は勝った人にアメリカンドッグを奢る。どう?」 私の提案に夏希は「いいぜ。絶対に負けないからな!」と張り切り、二人で射的へと並ぶ。夏希の横顔は、まるで幼い子どものように無邪気だった。 胸の奥が、まるで砂漠みたいに熱くなった。 射的をしたり、ヨーヨー釣りをしたり、フライドポテトなどを食べたりしているうちに、すっかり時間は流れていって、「もうすぐ花火の打ち上げを始めます」とアナウンスが鳴り響いた。 「おっ、いよいよか!」 「楽しみだね!」 私たちだけじゃなくて、周りにいる人たち全員が漆黒に染まった夜空を見上げる。空を見上げて数秒後、一瞬にして目の前にある世界が色とりどりの光に染まった。 (綺麗……) 美しい花が夜に咲いて、あっという間に消えていく。でもその儚さに浸る暇もなく、次々と花火が打ち上げられていく。だから、心の中では「綺麗」としか呟くことができない。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加