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大輝は太陽の光を浴びることができない。
遺伝子に異常があり、肌に紫外線を受けると深刻な火傷を負い、最悪は命に関わる病気へと繋がってしまう。
屋外に繰り出さないことが基本。外出の際には紫外線をカットする防護服の装着が絶対条件だ。生まれてからずっと、アイツは文字通り日陰の日常を送っていた。
しかし、いかに太陽を避けて暮らしていたとしても、大人になれないまま人生を終える可能性が高い。神経に生じた障害が、少しずつ着実に大輝の自由を奪っていく。
直近の聴力検査で異常が発覚した。それが終わりの始まりだった。
これから大輝は何年かの時間をかけて、運動機能を失い、言葉を失い、呼吸を失い、やがては死に至る。
病気の原因は100%遺伝によるものだった。
俺たちの子供に生まれてしまったから。俺たちが大輝を望みさえしなければ。繰り返す葛藤に終わりなどなかった。
それでも、たとえどんな形でもいい。大輝に幸せになってもらいたかった。
親とはそういう純粋な願いを抱く生き物だった。それを教えてくれたのも大輝だった。
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