サマーライト

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 哲朗と別れた俺はあの神社へと向かった。蝉しぐれが降り注ぐ長い石段を登りつめ、境内にたどり着く。思った通り、そこに自販機などはなかった。  サマーライトは架空の飲み物だ。  小学生の頃、仲間内でオリジナルのお菓子やジュースを考える遊びが流行っていた。既存の商品の名前を変え、何でもありな空想の効力をプラスして、友だちの前で発表する。サマーライトは、そんな遊びの中で俺が考えたアイディアの一つだった。  なら、これは何だ? この瓶ラムネだけが未来へとタイムスリップしたとでもいうのだろうか。  逡巡したまま田舎道を歩いていると、車のクラクションが鳴った。目の前に見覚えのあるミニバンが停まった。車内から姿を現したのは妻の夕梨花だった。 「……やっと見つけた」  そう言って彼女が嘆息する。 「どうしてここに……」 「どうしてじゃないよ。最後の連絡から何日経っていると思ってるの? 一体、何してたの?」 「――パパ!」  懐かしい声がした。車のパワーウインドウが開いて、顔を出した大輝が俺に向かって手を振った。  夏空の下で久しぶりに見た大輝は、いつもと同じ様に防護服を着ていた。
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