異世界転移

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異世界転移

つか、冷静になって考えて見たら鎧なんか来て街歩いてたら目立つし噂になるよな?しかもイケメンとなれば余計にありえる。 そんな風に思いながら恐る恐る近づいた。 「ふふ、警戒しなくても大丈夫です。私は騎士ですから無害な人を襲ったりしませんよ。」 「あ、空巣じゃないんだな…?」 「とんでもない。そんなことしませんよ。」 ニコリと微笑んだままそう言うと、ポンポンとベッドを叩いた。 俺は笑顔から、コイツも無害そうだなと少し緊張が解けて隣に座った。 男は俺が座ったのを確認すると突然真剣な表情に変えた。 「私はいつものようにディオール国で団長補佐をしていたんですが、大きなミスをしてしまったんです。」 「ミス?」 「はい。今回の仕事は人に化けるグリーンマンという一つ目で人間を襲うモンスターなんですが、それをうまく見分けなければなりません。」 「どうやって見分けるんだ?」 「小さな違いですが、彼らには目が一つしか無いため、二つ目の目を作ることが苦手だったんです。目の大きさが左右違いすぎるとか、目の色が違うとか、色彩と瞳孔がずれているとか、ただの一般人かもしれない…。そんなとてもリスクのある仕事でした。その日は調子がよく、次々と討伐し、処理を繰り返していたんですが、残り僅かで終わる。そう思って色彩や瞳孔のずれている目の前の人に剣を振り下ろすと、赤い飛沫が飛びました。…彼らからは青い血しか出ないんです。」 俺は男が顔を青くして語る様子から更に嘘じゃないんじゃないかと思い始めていた。 「私の国では意図せず市民を殺せば無期懲役、意図していれば死刑なんですが、私は仕事ということもあり減刑してもらえたんですが、何億人に1人が受ける刑、“異世界転移”を受けたんです。存在すらなかったことになるんです。」 無期懲役や死刑に比べたらかなり軽いように思える。けれどもしかすると男は大勢の大事な人を置いてきたのかもしれない。 そう思うと可哀想で、俺は思わず怪しい男をギュッと抱きしめた。 「お、お前は怪しいし話もあまり理解できないけど…少し信じてみる。」 グッと硬い鎧に顔を押し付けてポツリと呟くと、男はパァッと目をキラキラさせた。 「本当ですか?!すごく嬉しいです。」 男はギュッと俺を抱きしめ返した。 なんで俺こんなにあっさり納得してんだろうとモヤモヤしながら男から離れた。 それからジッと男を見つめていると、鎧を着ていることを思い出した。 「そうだ。その服脱げ!」 ビシッと鎧を指さすとジーッと真剣な表情で俺を見つめてから男は素直に頷いた。 ガシャンガシャンと音を立ててながら腰に刺さっているデカい剣を抜いて、鎧も脱いだ。全て端っこに寄せると、中のシャツも脱いだ。 それからギシッと音を立ててまたベッドに座ると真剣な顔のままドサリと俺を押し倒した。 「…おい、なにしてるんだ?」 「脱げってそういうことでしょう?」 「バカか。そなもの着てたら落ちつかないから脱げって言っただけだ!…お前の国ではこういうのは普通なのか?」 「んー…まぁそうですね。そもそも私たちの世界では今はもう女性という生き物が存在しませんので皆恋愛対象は男です。」 「ま、マジか…。」 そんなことあんのか。 「はい。男が子を授かります。」 当たり前のことを言うようにサラリと言った。 「この世界には女の子いるし可愛い子探せよ。」 俺はコイツとそういうことしたくない。…できなくはないけれど。と思っていると男はジーッと俺を見つめた。 「あなたは男同士でできませんか?」 無理ではないな。…つかなんなら学生の頃“若気の至り”ってヤツでふざけて幼馴染のしゃぶったり抜きあったりしてたし。 そういうこともあってあまり動揺はしない。 ……なんて言えるわけない。コイツ絶対調子に乗る。 俺は男をジーッと見つめ返すと、『ない』と返した。
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